『世界最速のインディアン』
バート・モンローという名の老人が自ら長年かけて改造したバイク、「インディアン」で世界最速記録を出すべく、ニュージーランドからアメリカのボンネビルを目指すロードムービー。
これ、傑作。
個人的には好きな映画ほど、あまり語りたくない。なぜなら、先入観なしに見てほしいから。だから、これから見ようと思っている人はこの先を読まなくてかまわない。公開を心待ちにしてほしい。
とにかく、主人公のアンソニー・ホプキンスのキャラがいい。飄々としていながら、信念は曲げない。他人にバカにされても気にしない。でも、世界最速を出すことには執着する。家も抵当に入れる。それでもアメリカを目指す。
漢だ。漢がここにいる。
行く先々で出会う人々がまたすばらしい。みな、ホプキンスに惹かれていく。そして協力する。変なやつらばっかり。でも愛すべき人々だ。
感動するシーンも多いが、押し付けがましさはまったくない。芸術的なほどのさりげなさで、胸を打つ。深く残る。まーべらす。
ラストのカタルシスはこの上ないものがある。スタンディング・オベーションをしたかったくらいだ。終わってから何度、「面白かったですね」といったかわからない。映画を見てここまで興奮したのは、実に久しぶりだ。
よく「なにかオススメの映画ある?」と聞かれるが、今後しばらくはこの作品を挙げることになるだろう。今年は1本目からすばらしいものを見られた。
いい年になりそうだ。