『九杯目には早すぎる』

九杯目には早すぎる (FUTABA・NOVELS)

九杯目には早すぎる (FUTABA・NOVELS)

短編5本とショートショート4本収録。
以下各作品にミニコメ
「大松鮨の奇妙な客」
大松鮨を訪れた男の奇妙な行動に端を発した物語。チェスタトンの某短編と似た雰囲気がある。話の転がし方が上手い。
「においます?」
ショートショート。切れ味が鋭くにやりとさせられる。きっちりと結末を描ききらないところも好み。
「わたしはこうしてデビューした」
ストーカーの描写が抜群に上手い。サイコモノとしても楽しめる上にミステリ的処理も手馴れている。
「清潔で明るい食卓」
ショートショート。やや薄味か。
「タン・バタン!」
ついてない男と嫌な男の描き方が巧み。作品世界に引き込まれる。
「最後のメッセージ」
短いが、上手く膨らませれば『古畑任三郎』の1エピソードとなりそうなほど上質な作品。ショートショートの中ではこれがもっとも気に入った。
「見えない線」
後に残る余韻集中ナンバーワンだが、ミステリ的には薄味。
「九杯目には早すぎる」
ショートショートの中では一番面白くなかった。やや安易な印象はぬぐえない。
「キリング・タイム」
集中、これがもっとも面白かった。「わたしはこうしてデビューした」や「タン・バタン!」もそうだが、嫌な奴の描き方が抜群に上手い。ミステリとしても多重構造で深みのあるつくりになっている。