『昆虫探偵』感想

昆虫探偵 (光文社文庫)

昆虫探偵 (光文社文庫)

昆虫世界を舞台にした、異色の本格ミステリ。昆虫の珍しい生態をトリックに使っているものなんかを読むと、化学ミステリなどでよくある「知っている人だけはわかるが、知らない人はどう論理的に考えてもわからない」的な印象を受け、あまり感心しなかったのですが、それでもやはりこの特殊な世界を舞台に本格ミステリを成立させたことを評価すべきでしょう。
個人的に気に入ったのは昆虫界の「日常の謎」を扱った「昼のセミ」、クモの悲哀を描いた(?)文庫書下ろしの「ジョロウグモの拘」、法月綸太郎の名探偵問題まで(軽く)扱った「ハチの悲劇」の3作です。最後にこの作品を表現するにふさわしい作中生物の台詞を紹介。


ワシは思わず叫んでいた。「信じてくれるのか! こんな冗談みたいな真相を!」
「もちろんですよ、ボス。仲間じゃないですか」