『兄の殺人者』

兄の殺人者 (現代教養文庫―ミステリ・ボックス)

兄の殺人者 (現代教養文庫―ミステリ・ボックス)

D・M・ディヴァインの処女作。兄に呼び出されたサイモンは、オフィスへと向かう。そこで待ち受けていたのは兄の死体だった。捜査の過程で、兄が恐喝をしていたらしい証拠が出てくる。だが、サイモンはそれを信じない。兄の名誉回復と犯人逮捕のため、サイモンは自ら立ち上がる。
これは面白かった。以上! ってわけにもいかないので感想を。大々的なトリックを使っているわけではないので、地味な印象を受けるかもしれません。しかし全編を通じて一人称の主人公が仮説のスクラップアンドビルドを繰り返す姿は圧巻。そして、最終的に明らかになる事実によって、緻密な伏線とそれによって構築される論理が明らかになります。これにはかなり唸らされます。作中で主人公が抱いていた違和感もすべて納得の行くかたちで解決されるのもすばらしい。訳も読みやすいです。まーべらす。