『亜愛一郎の転倒』感想

亜愛一郎の転倒 (創元推理文庫)

亜愛一郎の転倒 (創元推理文庫)

亜愛一郎シリーズ第2弾。さまざまタイプの作品で楽しませてくれます。そのすべてが良質の短編なのだからすごいです。田中芳樹氏の解説はネタばれありなので3冊目の「逃亡」を読了後に読んでください。以下、各作品にミニコメ。


「藁の猫」

なぜ画家は、わざと自分の絵の中に町がいを描いたのか? という謎が、非常に論理的で納得のいく形で解決されます。
「砂蛾家の消失」

館消失モノ。大トリックだけれど無理はなく、しかも細かい点にまで気を配られているところに好感が持てます。
珠洲子の装い」

チェスタトン張りの逆説がさえる一編。
「意外な遺骸」

童謡殺人モノ。「あんだがさどこさ」が扱われているのが熊本人としてはうれしいw
「ねじれた帽子」

これだけは集中でやや劣る印象を受けました。とってつけたような論理展開が気になります。
「争う四巨頭」

日常の謎系。読了後にはさわやかさが残ります。
「三郎町路上」

死体消失ならぬ死体出現モノ。どう考えても不可能な状況で、タクシーの中に死体が現れます。犯行にやや行き当たりばったり感はありますが、大きな瑕疵とはなっていません。面白いです。
「病人に刃物」

誰も刃物を持っていない状況で、突然男が刺し傷を負って・・・。
これも発想の転換が面白い作品。楽しませていただきました。