『プラナリア』感想

プラナリア (文春文庫)

プラナリア (文春文庫)

山本文緒直木賞受賞作。短編5本収録。以下各作品にミニコメ。
プラナリア
乳がんを患ったあと、何もする気がなくなった女性の物語。周囲との温度差、理解のなさなど、考えさせられるところも多い。
「ネイキッド」
離婚を機に職を失ったキャリアウーマンの物語。淡々と描かれているが、描写が巧みなためまったく退屈しない。
「どこかではないここ」
家族の中で孤立感を高めていく主婦の物語。5編の主人公の中では最も抑圧されているが、その分ラストの開放感も大きい。集中、もっとも気に入った作品。
「囚われ人のジレンマ」
まだ学生の彼からプロポーズされて悩むの女性の物語。
二人の関係を「囚人のジレンマ」になぞらえた構成が美しい。
「あいあるあした」
集中唯一の男性視点。周囲との関係から、改めて自分という存在を問い直す作品。


どの作品も流麗な文章と卓越した人物描写に支えられていて、読み応えがあった。まーべらす。