『クリスマス・プレゼント』感想

クリスマス・プレゼント (文春文庫)

クリスマス・プレゼント (文春文庫)

原題の『TWISTED』が表すとおり、捻りの効いた作品ぞろいの短編集。以下各作品にミニコメ
『ジョナサンがいない』
まずはこの作品で引きずり込まれました。作中に感じる違和感が、驚愕の結末に導きます。
ウィークエンダー
強盗と誘拐された男の会話劇。徐々にスライドしていく展開がおもしろいです。
『サービス料として』
夫が父親の幽霊を装っている、と訴える女性と精神科医の話。皮肉な結末まで一気に読ませます。
『ビューティフル』
ストーカーに悩まされる美貌の女性の物語。悲哀にあふれるラストが印象的です。
『身代わり』
これもツイストの効いた作品。タイトルの真意がラストにわかります。
『見解』
このくらいになると、段段慣れてきて、結末も読めてしまいました。それでも十分に楽しめる作品には違いありませんが。
『三角関係』
これは面白かったです。国産作品にも似たような仕掛けを使ったものはありますが、見せ方が抜群にうまいです。
『この世はすべてひとつの舞台』
これはちょっといまいちでした。稚気に飛んだ作品ではあるのですが。
『釣り日和』
エリートが釣りに出かけた先で出会ったのは・・・。これも演出が抜群にうまい作品です。
ノクターン
刑事を目指す巡査の物語。集中ではやや甘めの作品。
『被包含犯罪』
法廷ミステリ。伏線の張り方がやや甘いですが、胸のすくような逆転劇を楽しめます。
『宛名のないカード』
嫉妬に狂った男を主役に据えた、上質のスリラー。淋しいラストがあとを引きます。
『クリスマス・プレゼント』
リンカーン・ライムモノ。たいした事件ではないと思われていたものが、意外な方向に転がっていく過程が面白いです。
『超越した愛』
愛しすぎた男の物語。視点を変えることが、物語ががらりと変化します。
『パインクリークの未亡人』
会社を引き継いだ未亡人の話。策略が渦巻く世界の物語。
『ひざまずき兵士』
これも結末が読めましたが、やはり演出がうまいので楽しめます。すごい。


執拗なまでにどんでん返しにこだわった作品集。よく「オススメのミステリを教えてください」といわれるのですが、今度からはこれを勧めたいと思います。ミステリ初心者からすれっからしにまで推薦できる良作です。