『サム・ホーソーンの事件簿Ⅳ』

サム・ホーソーンものの短編12編とボーナストラックとしてベン・スノウものを収録した短編集。
さすがに4冊目ともなるといいネタは残ってないだろうなあ、と思っていたのですが、なんのなんの。たしかに不可能犯罪としては素朴すぎるようなトリックも少なくありませんが、それでも十分に楽しめる1冊に仕上がっています。中でも白眉は「見えない人」テーマの傑作、「革服の男の謎」。これはシリーズ中でもかなり高位置を占める作品だと思います。ほか銀行強盗モノの「黒いロードスターの謎」や捨てトリックが楽しい「要塞と化した農家の謎」も面白かったです。
シリーズを通して読者としては前述の「黒いロードスターの謎」で新看護師のメリーが登場するところや、「田舎協会の謎」で前の看護師エイプリルが再登場するところ(この作品のラストの台詞がまたすばらしい!)、「呪われたティビーの謎」でベン・スノウと競演するところなど読みどころ十分です。
ただ、短編のラストで次の作品紹介をする、というパターンが途中で崩れるのがなんとも残念ですが、まあ、長く続けているシリーズなのでしかたないでしょう。とにかく、これからも読んでいきたいシリーズであることは間違いありません。