『甦る幻影城Ⅱ 幻の名作』感想

甦る「幻影城」〈2〉探偵小説誌 幻の名作 (カドカワ・エンタテインメント)

甦る「幻影城」〈2〉探偵小説誌 幻の名作 (カドカワ・エンタテインメント)

幻影城で復活を遂げた作家たちのレアな作品を集めた1冊。以下各作品にミニコメ。


「謎の殺人」本田緒生
いわゆるバカミス系。かなり豪快な(というか強引な)展開が待ち受けています。無理目だけど面白いです。
「人攫い」地味井平造
話の閉じ方がものすごくしゃれています。思わずにやりとしてしまいました。
「やさしい風」瀬下耽
タイトルの意味がラストにわかります。ちょっといい話。
「石は語らず」水上呂
科学工業業界を舞台にした話。業界のことがえらく詳しく描かれていますが、物語としての面白さにはつながっていないように感じました。
「三番館の蒼蝿」光石介太郎
恐い話のはずなのに、飄々とした筆致で描かれているのであまりそう感じません。皮肉なラストまで一気読みさせられてしまいました。
フロイトの可愛い娘」朝山蜻一
幻想的な物語。独特の世界観がいいです。
「陽炎の家」氷川瓏
ホラー色の強い作品。傑作とはいえませんが、楽しめる出来。
「暗い墓場」香住春吾
事件の真相自体はほぼ予想通り。ラストの一言がすべて表している作品。
マクベス殺人事件」宮原龍雄
派手さはないが、堅実に作られた本格短編の佳作。シェイクスピアに関する衒学趣味に満ちているところもおもしろかったです。
「らいふ&です・おぶ・Q&ナイン」狩久
これはなんだろう、ものすごくおかしな話。とにかく登場人物が全員変。正直、この本はこれ1篇を読むためだけに買ってもいいと思います。変な話が好きな人にオススメ。
「天童奇蹟」新羽精之
教科書にでも載りそうな雰囲気の作品。ラストは予想の範疇ですが、それでも楽しめます。


とにかく、作者が何を書きたかったのかはさっぱりわかりませんがなんだか面白い>「らいふ&です・おぶ・Q&ナイン」がベスト。ほか、「謎の殺人」、「三番館の蒼蝿」などが楽しめました。読んで損はないアンソロジーです。