『被害者は誰?』感想

被害者は誰? (講談社ノベルス)

被害者は誰? (講談社ノベルス)

中短編4編収録。以下各作品にミニコメ。一部反転アリ。
「被害者は誰?」
いわゆる手記モノ。その記述の中から真実を導き出す、という趣向です。違和感を覚えていた部分がすっきりと解決されます。正直、気づきませんでした。でもこれって犯人に一言「この手記はお前が書いたのか?」と訊いていればそれですんだことですよね。まあ、楽しめたのでいいですが。それにしても、ヤな人間の描き方がうまいです。
「目撃者は誰?」
不倫現場を目撃され、脅迫される男女。また、それと時期を同じくして社宅内の数件に、なぜか旅行券が配られていた・・・。
二つの事件のからめかたがうまいです。シュールなオチもいい。
「探偵は誰?」
これも手記モノ。フーダニットと探偵探しが楽しめます。フーダニットは消去法で犯人を導き出す趣向でなかなか楽しめたのですが、やや詰めが甘いかと。たとえば被害者は香水をつけていた。だから停電でも確認できたはず。ということはろうそくを持ち出した者(=犯人)は、嗅覚異常者である。という風に展開されるのですが、仮に匂いでわかったとしても実際に視覚で確認したいと思うのが人情ですよね。だから、これで一足飛びに嗅覚異常者が犯人であると決め付けるのはやや性急かと思いました。同じ手がかりを使った某名作の場合はこれと違って説得力がありましたが。
「名探偵は誰?」
うーん、ここまでくるとややバレバレでしたね。あからさまに記述に違和感がありましたし。でも楽しめました。


やや難があるかなあ、と思わないでもないのですが全体を通してみると稚気にあふれた佳品といえると思います。是非続編も作っていただきたいです。