『最後の一壜』感想

最後の一壜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

最後の一壜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

異色作家エリンの短編集。15編収録。いっぺんに読んでしまうのがもったいなくてちびちび読み勧めてました。正直『九時から五時までの男』よりは心惹かれるものが少なかったです。でもそれは『九時から五時までの男』がかなりの高水準にある作品集だというだけで『最後の一壜』のレベルが低いというわけではありません。奇妙な味の作品集として、存分に楽しめる出来に仕上がっています。
集中、特に気に入ったのは表題作で貴重なワインをめぐる辛らつなオチが魅力的な「最後の一壜」、画家を食い物にする女性画商。彼女に待ち受ける皮肉なラストが光る「画商の女」、ヒッチハイクを舞台にしたサスペンスがラストにいたって急激に一変する「世代の断絶」の三編です。