クリスマスイブ

街はクリスマス一色。しあわせそうな恋人たちが行き交う中、一人COCO壱番でイカカレーを食べる僕。不意に、外を通る高校生カップルと目が合った。男の方が僕を見て笑った気がした。きっとこんな日に一人でカレーを食べている僕をあざけったのだろう。僕はゆっくり立ち上がると店を飛び出し、高校生カップルを探した。二人の背中はすぐに見つかった。僕は男の方の背中にドロップキックを喰らわせた。仰向けに倒れこむ男の上に、すかさず馬乗りになる。
「なんだ、てめえ!」彼女の手前もあるからか、ニキビ面の男はいきがって見せた。
 僕は握り締めたままだったカレールーのこびりついたスプーンを、ニキビ男の眼窩に突っ込んだ。
「いてええええ!!」ニキビ男が叫ぶ。そりゃそうだろう。スプーンを目につっこんでるんだから。当たり前のことを口にするやつは嫌いだ。
 僕はスプーンをくりっと動かし、にょひにょひと眼球を抉り出した。神経の束が、金魚の糞のように眼球にくっついてくる。
 ニキビ男が一段と大きな叫び声をあげた。うるさいな。
 周囲を行きかう人びとは、幸せそうな顔で通り過ぎるだけで、僕らを気にする様子も見せなかった。当然だ。今日はクリスマスイブなのだから。
 僕がもう片方の眼窩にスプーンを突っ込もうとしたら、ニキビ男の彼女が、「やめてよやめてよ」と泣きながら僕にすがりついたので、僕は「やめないよやめないよ」と言いながら彼女の顔面に裏拳を食らわせた。
 倒れこんだ彼女は、大量の鼻血を流していた。鼻の骨が折れたのかもしれない。これを機に整形をすれば、少しはみられる顔になるかもしれないな、と思った。
 ニキビ男に向き直ると、彼は気を失っていた。眼窩から飛び出した眼球が、メトロノームのように規則的に揺れていた。いい物を見せてもらったので、もう一方の眼球を取り出すのはやめにしてやることにした。
 クリスマスプレゼントには物足りないけど、まあいいや。