『美亜へ贈る真珠』感想

梶尾真治氏の初期作品集。ちょっと変わった設定を生かした切ない話、というと乙一氏を思い浮かべる人が多いと思いますが、この人は乙一氏が生まれる前からそういう作品を書いてきた人。以下、各作品にミニコメ。


「美亜へ贈る真珠」
非常に美しいラストが印象的な作品。このシーンだけのためにSF的設定を作り上げたのであろうと思われます。
「詩帆が去る夏」
ある意味狂気的な内容でありながらも、その中に切なさが漂う作品。主人公の心のゆれが胸を打ちます。
「梨湖という虚像」
梨湖が恋人を忘れられずに取る行動とは・・・。ネタバレになるのでかけませんが、なかなかインパクトのある過程が描かれています。ある意味、永遠の愛の話ですね。
「玲子の箱宇宙」
集中では少し色の違う作品。ラストシーンを思い浮かべるとかなりシュールです。
「"ヒト"はかつて尼那を……」
猿の惑星』を意識したような作品。愛をテーマにしてありますが、その他に種族を超えた友情も扱われている作品。
「時尼に関する覚書」
時系列をうまく生かした作品。SF的設定としてはこれが最も面白かったです。
「江里の"時"の時」
究極のすれ違いの物語。ラストがハッピーエンドかアンハッピーエンドかは読む人によって評価が分かれそうです。


個人的には「美亜へ贈る真珠」、「時尼に関する覚書」、「江里の"時"の時」が気に入りました。上質なSF、もしくは切ない話が読みたい人はどうぞ。