『模倣の殺意』感想

模倣の殺意 (創元推理文庫)

模倣の殺意 (創元推理文庫)

中町信氏のデビュー作。解説によると中町信という作家は「オールタイムベスト」や「年間ベスト」にはまったく選ばれたことがない作家だそうです。しかし、この『模倣の殺意』が「この文庫がすごい2005」のミステリー&エンターテインメント部門では上位に食い込みました。時代が中町信に追いついた、ということなのかもしれません。以下ネタバレ。読んでない方はとにかくご一読ください。
二人の登場人物の視点が交互に入れ替わるという構成からも、メインのトリックには早い段階で気づくことが出来ます。しかし、それは現在の新本格作品を多数読んでいるからであって、この作品が30年以上前にかかれたものであることを考えると、画期的だったのであろうと思います。
メインのトリックばかりに目が奪われがちですが、伏線がしっかり張ってあるところにも好感が持てます。また、弟子が師匠の作品を盗作した、というところから、実は師匠の方が弟子の作品を盗作していた、という流れは想像できたのですが、そこからさらに実は別の人物から師匠も弟子も盗作していた、と転がすところには感心しました。
難があるとすれば、偶然の出来事からヒントを獲得する都合のいいシーンが多いところですが、まあ、それもご愛嬌でしょう。

とにかく読んで損はない作品です。こりゃ、他の作品も読んでいかなきゃですねえ。