『木曜組曲』感想

木曜組曲 (徳間文庫)

木曜組曲 (徳間文庫)

過去に起こった事件について関係者が再び推理する、というのは岡嶋二人の傑作『そして扉が閉ざされた』と少し似通っているかもしれません。ただ、あちらはクローズドな空間だったのですが、こちらはとてもオープン。途中で買出しに出かけたりもします。次々と事実が明らかになり、メインとなるキャラクターもどんどん移り変わる展開はとても読み応えがありました。推理の過程も納得できるものでしたし。ただ、ラストの方はやや蛇足に過ぎるかな、という印象も受けました。まあ、これは好みの問題でしょう。
そうそう、『そして扉が閉ざされた』とは大きく違うのがもう一点。あちらの食事がひどく味気ないものだったのに対して、こちらはどれも読む者の食欲をそそるものばかりなのです。「おいしそうな新本格」としては北森鴻氏の『メインディッシュ』に匹敵します。おなかがすいているときに読むのは危険な1冊です。