『アトポス』感想

アトポス (講談社文庫)

アトポス (講談社文庫)

うーん、長い。第一声がそれです。プロローグ1の後に置かれた「長い前奏」が本当に長いです。でも、おもしろい。とくにエリザベス・バートリが血を好むようになる経緯から、フロレンスの大脱走までは本編よりおもしろいのではないかと思うくらいひきつけられました。
御手洗が登場するのはかなり後半になってからなので、ファンは少しじれったい思いをするかもしれません。事件の解決自体はおなじみの大トリックと強引さと偶然が大きなウェイトを占めています。前二つはいいとしても、偶然性だけはやはり気になります。いくつもの偶然が絡み合って成立しているような事件は、その偶然の数が多くなればなるほど興ざめしてしまうからです。しかし、示された結末に一応は納得させられてしまうのだから不思議です。これが島田マジックか。
赤子の首の後ろが食いちぎられていたり、死者の心臓の血がすすられていた理由についてはかなり鮮やかな解決がつけられていると思います。「おっ」と思わず声が漏れました。
それにしてもあれだけのことをやってるんだからレオナは無罪放免ってわけにはいかないと思うんですけどね。いいのかな?