公園にて

散歩の途中にほか弁を買って、公園のベンチで食べた。子供を遊ばせている若いお母さんたちが怪しげなものを見るような視線をこちらに送っていた。僕は気づかないふりをしてから揚げ弁当を喰らった。から揚げが一つ地面に落ちた。むなしかった。小さな柴犬が近づいてきて、落ちたから揚げを一口で食べた。
「器用だね」と僕は言った。
「そうでもないよ」と彼は答えた。
犬がしゃべったことに僕は少し驚いたけれど、まあ、そういうこともあるのかもしれないと納得した。
「首輪をつけていないようだけど、君は飼い犬じゃないのかい?」僕は訊いた。
「犬だからって、人間に飼われているのが当たり前だと思わないでほしいな」彼は不機嫌そうに答えた。
「でも」僕は少し意地悪な気持ちになった。「知ってるかい? 野良犬は保健所に連れて行かれて、殺されちゃうんだよ」
「そうなったら」彼は鼻を鳴らした。「そうなる運命なんだろう」
運命論者の犬がいるとは思わなかったので、僕は少し驚いた。
「それでいいのかい?」
「良いも悪いもないさ。君は自分のガンを受け入れた患者にも『それでいいのかい?』と訊くのか?」
「訊かないね」
「そうだろう」彼はあざけるように笑った。
そして彼は方向転換し、僕に尻を向けた。小さな尻尾がかわいく揺れている。
「どこへ行くんだい?」
「保健所以外のところさ」
彼の顔は見えなかったが、おそらく笑っているだろうと思った。
ふと視線をずらすと、若いお母さんたちが厳しい視線でこちらをにらんでいた。