『人食いバラ』

例によってネタばれは反転してます。これはいいですよ〜。毛糸売りの英子が豪邸の前を通りかかると、急に中に入るよう誘われ、元男爵からその家の財産を継ぐように言い渡される。というすごい出だし。元男爵の姪、春美がその英子の命をねらいます。ミステリ的にすごいことをしていると聞いたので読んだのですが、これは確かにすごい。謎の男の招待が死んだと思っていたあの人物だったというのは気づきませんでしたが、さほど意外というわけでもありません。それよりすごいのは、春美の病気を治すために、こんなに大掛かりなこと(何の関係もない英子を命の危険にさらした!)をやったところですね。いくらなんでも、やることがひどすぎるでしょう。にもかかわらず。自分を危険にさらした元男爵のみならず、殺そうとした春美まで許してしまう英子の心の深さ、というか無邪気さに笑えてきます。あと、冒頭の英子を跡取りにした強引な設定まで見事にひっくり返しているのはすごい。少女小説ならこういう設定もありか、という固定概念を逆手にとってます。すばらしい。巻末には監修の唐沢俊一氏による注釈という名の突っ込みも収録。賛否両論あるでしょうが、おもしろいです。ただ、ネタばれになっているので読むのは本文を読み終えてからのほうが吉。