贋作・日本を救え!

えっと最初に注意書き。今日の日記は長いです。その割に身はないです。ご注意ください。
喜国雅彦さんの「本棚探偵」シリーズはとてもおもしろく、僕の愛読書になっています。作中で喜国さんがチャレンジしてらっしゃる企画は、おもわず真似したくなるものばかりです。というわけで、真似することにしました。まず思い浮かぶのは『冒険』の中でやってらっしゃる「ポケミスラソン」。これは一日のうちにどれだけの数のポケミスを見つけることができるか、というもの。しかし、これを熊本でやろうとするとかなり無理があります。ポケミスを置いている古本屋自体が少ないからです。どんなにがんばっても300冊も見つけられればいいほうではないかと思います。では、『回想』にある「すべては俺の店」はどうでしょう。これは神保町にある古本屋を順番に回り、その一軒一軒で必ず本を買う、というもの。しかし、これも熊本にそんな古本街があるはずもなく不可能です。じゃあ、というわけで選んだのはおなじく『回想』に収められている「日本を救え!」です。これは出版不況の日本を少しでも救うべく、喜国さんが一日に五万円を新刊本に使う企画です。できるだけ多くの出版社、多くのお店で本を買うことが求められています(富の分配のため)。新刊本の店なら熊本にも結構あります。というわけでこれに決定!
さて、次に問題となるのは予算です。前述の通り、喜国さんは五万円使いました。今回僕がやるのはありていに言えばパクリ企画です。パクリであるからには元ネタよりスケールの大きいものでなければ意味がありません。そうかな? と首を傾げないように。僕自身も何言っているのかよくわかっていないのですから、余計不安になります。で、予算。喜国さんよりも大きなスケールということで僕は


1万円使います!!


あ、笑いましたね。でも、よく考えてください。向こうは売れっ子漫画家、こっちはいちNEETですよ。働いてないんですよ!!<働けよ。というわけで、年収比で考えると、僕の方がものすごいお金を使っているんです。すごいんです。だから1万円でGO!
朝11時、出発。本を買うならやはり街中かな、ということでそっち方面へ原付「シュトロハイム号」を走らせる。ちなみにこの名前は今付けました。駅に向かう途中にある本屋へ。ここは文房具屋と本屋が一緒になっているような小さなお店。めったに行きません。8年ぶりじゃないかなあ。ここでクイーンの『Yの悲劇』のなぜか新潮版を高校生の時に買った記憶があります。店内を見て回りますが、一件目にして早くも買うものがありません。いや、ないことはないのですが、せっかく買うなら、買っても買わなくてもいい本ではなく、心の底からほしいと思える本にしたいもの。それがないのです。店内を2周ほどしたところで光文社の江戸川乱歩全集シリーズを見つけました。これ、3冊くらいしか持ってないですよね。というわけで1冊購入決定。

『悪魔の紋章 江戸川乱歩全集第12巻』江戸川乱歩(光文社・初版・帯・1050円)

少年探偵団ものが読みたくなったので。でもここの店主がなぜか横柄。僕が本を差し出すと、やる気のない声で
「はい、1050円」
カチンとなりながらも1万円札と100円玉を差し出しました(千円札もあったのですが、これから1万円使うんだぞ、という意気込みも込めて1万円札で支払いました)。すると、店主は
「はい、おつり9050円」
と突きつけるように渡すのです。どうやら日本を救うつもりがしょっぱなから救う価値のない店に行ってしまったようです。えっと、つぶれちゃえ。
それから駅の側にある古本屋a-Tooへ。あれ、新刊本買うんじゃなかったの? とお思いでしょうが、やっぱ寄りたいじゃないですか、古本屋。まあ、新刊書店も古本屋も両方救おうという僕の心の広さがなせる技、とでも思ってください。新刊で1万円使えばいいんだろう? と自分を説き伏せました。しかし、ここで買うものがなく、困りました。だったらなにも買わずに出ればいいじゃない、というのは当然の問いかけですが、僕の中で「入った店では必ず1冊は買う」というルールがいつの間にやら形成されていたのでそれはできないのです。よく見ると舞城王太郎氏の『山ん中の獅見朋成雄』が100円で、『好き好き大好き超愛してる』が300円で売ってありました。両方とも持っていますが、なにもなかったら布教用にダブりで買っちゃおうかなあと思いました。でもその後、森博嗣氏の『ZOKU』のハードカバーが100円で落ちていたのでそちらを買うことに。ていうかこういうの見ると新刊で買うのが馬鹿らしくなりますよね。いかんいかん。

ZOKU森博嗣(光文社・初版・帯・100円)

辛島公園の地下駐輪場に「スピードワゴン号」を駐めて(名称が変わっていますが、気にしないように)まずはリブロ熊本店へ。ここには後輩の女の子が勤めているので、買う意味があります。「君の給料の一部は僕の懐から支払われているのだよ」といってやらなくては。でも、この日は見かけず。ここで河出の「本格ミステリコレクション」をさがす。実は本日の主目的はこれを買うことだったのです。僕はまだ『飛鳥高名作選』しか持っていないので、シリーズ全部買おうと思えば、あと5冊、つまり5000円は必要ということになります。これなら1万円使うなんて簡単です。簡単なはずでした。でも、ここには「本格ミステリコレクション」が1冊もなかったのです。それでもまだ最初だからいいや、と思っていたのですが・・・。で、ここで買ったのは

アヒルと鴨のコインロッカー伊坂幸太郎東京創元社・このミス帯・1575円)

伊坂幸太郎氏は人気作家のはずなのに古本屋ではあまり見かけません。これは面白そうだし、東京創元社を救うことができるので購入。ところで「そうげん」と入力して変換したときに「草原」よりも先に「創元」と出てきたらその人はミステリマニアです。あなたの恋人のパソコンで試してみたらいかがでしょう? 閑話休題。次の店へ。紀伊国屋書店熊本店。ここにも「本格ミステリコレクション」は1冊もなし。この辺からいやな予感がしてきました。買ったのは

クロノス・ジョウンターの伝説梶尾真治ソノラマ文庫・初版・帯・署名・630円)

梶尾真治氏の署名本がたくさん置いてありました。ちなみに僕は地元密着SF『黄泉がえり』も署名本で持ってます。梶尾氏は熊本在住の作家さんなので、紀伊国屋がたくさんサインを書かせている書いてもらっているんでしょうね。途中、二件ほどの大型書店を飛ばして(ここは後から行くのです)上通りにある金龍堂まるぶん店へ。ここは店の前に河童の置物(?)があることで有名です。熊本の中高生はここでいきなりだんごを食べながらデートの待ち合わせをします。うそです。でも中にはそんなカップルもいるかも。ここでも「本格ミステリコレクション」略して「本ミスコレ」はなし。

『最後の一壜』スタンリイ・エリン(ポケミス・初版・帯・1575円)

こないだ読んだ『九時から五時までの男』がおもしろかったので敬意を表して。次に近くの長崎書店へ。ここは少し小さめのお店なのでいやな予感はしていたのですが、買うものがありません。当然「本ミスコレ」はなし。この買うものがないというのは、僕にとってはってだけでお店の悪口を言っているわけではないのであしからず。少なくとも最初に行った店より27倍はましです。店内を回って新刊本コーナーにたどり着いたところで1冊発見。

『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』北尾トロちくま文庫・初版・819円)

これは買おうと思っていた本なので、ちょうどよかったです。で、上通りの先にある並木通りというところへ出て、舒文堂河島書店という古本屋に入りました。郷土史(?)がメインの店のようですがここでは昔均一棚で鮎川哲也編『密室探求』の文庫版2冊を見つけたことがある侮れない店。でも今日は特になにもなし。知ってましたけどね。先週も特に買うものなかったし。『復刻EQMM』が定価の半額で置いてありましたが、そんな重いもの買いたくありません。これからまだまわるつもりなんですから。何とか見つけたのが

橘外男集 怪奇探偵小説名作選5』日下三蔵編(ちくま文庫・初版・700円)

同じ日下三蔵氏の仕事でもこっちじゃない、とか思いながら(笑)。それからもう一件古本屋。ここはややお年を召したご夫婦(たぶん)が店番をされてます。ここでも買うものなし。わかってましたけどね。だって、ここで買ったことないもん。それでも入っちゃう悲しい性。別にほしくもない本を買う。

『ゲスリン最後の事件』フィリップ・マクドナルド(創元推理文庫・初版・220円)

それから後戻りしてさっき抜かした大型書店へ。まずは何かと騒がしいダイエーの中にある喜久屋書店熊本店へ。いろいろ見てまわるが特にほしい本がなし。このくらいで気づいたのですが、僕は普段古本ばかり買っているから、新刊本がどうしても高く見えてしまうんですね。だから、ほしい本はたくさんあるはずなのになかなかふんぎれないのです。これも古本屋のもたらす悪影響ですね。ていうか、ただ単に貧乏性って感じもしますが。ここでふと「漫画買ってみっか」と思いつき、漫画コーナーへ。興味がないはずなのに手塚治虫全集の前に立っている僕。これも喜国さんの影響に違いない。大体、僕のミステリの守備範囲は海外は黄金期、国内は幻影城以降だけだったのに、喜国さんの影響で戦中、戦後の作家にまで手を伸ばし始めてしまったのです。誰の影響で道を踏み外しつつあるか、明らかですね。棚を見て、手塚治虫(おさむで変換するとちゃんと「治虫」がインプットされてるんですね。手塚治虫のとき以外使わないと思うのですが)の『新撰組』に興味を魅かれる。その隣にあった『少年探偵ロック・ホーム』もなんだかおもしろそう。どっちにしようかなあ、と悩んでいると、隣につげ義春の著作が並んでいるのを発見。久しぶりに「ねじ式」が読みたくなり

ねじ式つげ義春小学館文庫・帯・610円)

を購入。さらば手塚治虫。続いて蔦屋書店へ。ここは最近できたばかりですが、熊本で一番大きな書店でしょう。さすがに充実の内容。しかしここでも「本ミスコレ」はないのです。ぼくは確信しました。今、熊本の書店には「本ミスコレ」は1冊もありません!!いろいろみてまわってここでは2冊購入。

『「少年」傑作集』光文社文庫編(光文社文庫・帯・933円)

『カラサワ堂変書目録』唐沢俊一著 ソルボンヌK子画(知恵の森文庫・初版・帯・599円)

『「少年」傑作集』は収められている「テニスコート殺人事件」というのがどうしても気になったため購入。唐沢俊一さんは先日読んだ著作がおもしろかったので。ここでふと気づきました。僕がこんなくだらないこと(自分で言ってたら世話ない)をやっているのは喜国雅彦さんの影響です。それなのに喜国さんの本を1冊も買わないでいいのでしょうか。いや、よくない(反語)。喜国さんの漫画は漫画喫茶で読んだり、古本屋で立ち読みしたりしていますが1冊も所持していません。持っているのは本棚探偵シリーズの2冊のみ。この機会に漫画も買っておくべきではないでしょうか。でも、ここで気づきました(よく気づくな)。もっとほかにいい本があるじゃないか、と。でも、その本はここにあるものはやや状態が悪い。ということでさっきの喜久屋書店へ戻りました。そしてかったのはコレ。

天城一の密室犯罪学教程』天城一日本評論社・このミス帯・2940円)

その値段におののいて買えずにいたこの本。こんな機会でもなきゃ手が出ませんぜ。そして、この本の帯に喜国雅彦さんの推薦文が載せられているのです! もちろんこの本を買っても喜国さんの収入にはならないでしょうが喜国さんの推薦文のためにこの本を買った人間がいるということは何かになりませんか?<何にだ。
今日、新刊本に使ったお金は10,798円。少しオーバーしてしまいました(最後にでかいのが来たのが大きい)が、超える分にはいいでしょう。日本経済を少しは救えたでしょうか? さて、買えなかった「本ミスコレ」はbk1にでも注文するか・・・。
注)文中でほしい本がない、などといっていますが、これは書店を非難するものではありません。売れない本を置かないのは書店として当然だからです。名前を挙げている書店すべてに畏敬の念を抱いています。最初に行った店だけはつぶれてほしいですが(笑)。


長々と取り留めのない文章を読んでいただき、ありがとうございます。本当は今日、読み終わった本などもあるのですが、もう書く気力がないので明日回しにします。

↑今日買った店でのレシート。そういや、最初の店はレシートもくれなかった。

↑今日買った本たち。